人材育成

DX時代の人材育成戦略|企業が取り組むべき施策とは

DX時代の人材育成戦略|企業が取り組むべき施策とは

DX人材の育成は、どの企業でも重要だと分かっていても、何から着手すべきかが難しいテーマです。

「全社員にプログラミングを学ばせるべきなのか」「研修を増やせば成果が出るのか」「現場が忙しくて学習時間が取れない」といった悩みは、部門や企業規模を問わず聞かれます。

IPAの「DX動向2024」でも、企業がDX推進の主要課題として「人材不足」「育成の困難さ」を挙げているとされています。

本記事では、DX時代の人材育成戦略を「役割別のスキル定義」「実践型の学び」「経営としての仕組み化」という観点で整理し、企業事例も交えながら、取り組むべき施策を具体的に解説します。

DX人材育成は「役割別設計」と「実践中心」で成果が出やすいです

DX人材育成は「役割別設計」と「実践中心」で成果が出やすいです

DX時代の人材育成戦略では、全社員に同じ研修を配るのではなく、役割別に必要スキルを定義し、ギャップから育成計画を作ることが中核になります。

あわせて、座学中心からOJTやプロジェクト型学習などの実践中心へ移行することが重要です。

さらに、育成は現場任せにせず、経営戦略の一部として位置づけ、スキル可視化や評価制度などの仕組みと連動させることで、継続性が高まりやすいと考えられます。

DX人材育成が難航しやすい背景と、設計の要点

DX人材育成が難航しやすい背景と、設計の要点

「育成の困難さ」と「人材不足」が同時に起きやすいです

IPA「DX動向2024」では、DX推進における課題として育成の難しさ人材不足が主要項目として挙げられているとされています。

外部採用だけで必要人数を満たすのは難しく、社内育成(リスキリング)を組み合わせる必要がある一方で、育成には時間がかかります。

このため、短期で「研修を増やす」だけではなく、育成を回し続ける仕組みが求められます。

全員に高度スキルは不要で、段階設計が現実的です

近年は、DX人材をITリテラシーからエキスパートまで5段階で整理し、段階的に育成する考え方が広がっているとされています(2024年以降の動向)。

重要なのは、全社員に同じ到達点を求めないことです。

たとえば、全社員にはデジタルリテラシーとデータ活用の基礎を求めつつ、データ分析、AI、IoT、アジャイル開発などの高度スキルは、専門職や推進役に重点配分する設計が合理的です。

役割別スキル定義の進め方です

役割別スキル定義は、次の順で進めると整理しやすいです。

  • DXで実現したい事業・業務の変化を言語化します
  • 役割(全社員・管理職・推進リーダー・専門職など)を分けます
  • 役割ごとに必要スキルを定義します(例:データ読解、要件定義、プロダクト思考など)
  • 現状スキルを測り、ギャップを可視化します
  • ギャップに応じて学習手段(研修、OJT、プロジェクト)を割り当てます

この「ギャップ起点」の設計が、研修の過不足を減らすうえで有効と考えられます。

座学から実践へ移すと、定着と成果が出やすいです

DXは知識だけでなく、現場での意思決定や改善活動に落とし込む必要があります。

そのため、座学に加えてOJTやプロジェクト型学習を組み込むことが重要です。

三菱総合研究所の指摘として、実行力などの非認知的スキルはOJTで習得されやすい、という趣旨の見解があるとされています。

研修で理解した内容を、実務課題に適用する機会を設計できるかが分かれ目になります。

経営層のコミットメントが「継続」を左右します

DX人材育成は、個人の努力に依存すると継続が難しくなります。

そのため、経営として、育成を経営戦略の一環として位置づけ、評価制度、配置、プロジェクトアサインと連動させることが求められます。

また、スキルアセスメントにより現状を把握し、育成投資の優先順位を決める動きも重要です。

事例として、大鵬薬品工業さんが全社員のDXスキルを可視化する取り組みを進めたことが効果的だと紹介されています。

学習データを活かす「データドリブン育成」が広がっています

2024年以降の動向として、学習履歴や到達度をデータで把握し、進捗を可視化するデータドリブンな育成が注目されています。

学習の受講有無だけでなく、課題提出、実務適用、プロジェクト貢献などを組み合わせて見ることで、育成の質を上げやすいと考えられます。

対象者選定は「意欲」と「配置バランス」が鍵になります

育成対象は、希望者だけ、または特定部署だけに偏ると、全社展開が難しくなる可能性があります。

専門メディアなどでは、意欲・経験・部署バランスを考慮し、リーダー候補を優先することが有効だと紹介されています。

特に、現場で業務変革を進める推進役が不足すると、研修が「学びっぱなし」になりやすいです。

企業が取り組むべき施策をイメージできる事例です

双日さん:エキスパート化を数値目標で推進しています

最新動向の例として、双日さんは2027年3月期までに総合職の10%(約200人)をエキスパート化するプログラムを実施中とされています。

この事例は、育成を「努力目標」ではなく、人数・期限を伴う経営課題として扱っている点が参考になります。

また、ビジネスデザインコースなど、実務に近い形で鍛える設計が成功例として挙げられています。

キリンホールディングスさん:短期集中と実践で学びを業務へ接続しています

キリンホールディングスさんでは、3カ月の集中プログラムが成功例として紹介されています。

短期集中は、学習の勢いを作りやすい一方で、業務への適用が伴わないと効果が薄れやすいです。

その点、座学だけでなく実践要素を組み合わせる設計は、知識の定着に寄与すると考えられます。

みずほFGさん:継続学習文化をプログラムとして育てています

DX人材育成は、単発研修では終わりやすいです。

みずほFGさんのデジタルイノベーションプログラムは、継続学習文化のモデルとして挙げられています。

定期的な勉強会やナレッジ共有の場を設けることは、育成を「イベント」から「文化」へ移すうえで有効と考えられます。

ダイキン工業さん・日清食品さん・伊藤忠商事さん:テーマ特化の実践が参考になります

企業事例として、ダイキン工業さんはAI/IoT研修、日清食品さんはデータ分析プロジェクト、伊藤忠商事さんはタスクフォースの取り組みが参考として挙げられています。

これらに共通するのは、テーマを絞り、実務課題と接続した学びを設計している点です。

「全方位型」で広く浅く実施するより、少人数でも成果が見える領域から始めるほうが、社内の納得感を得やすい可能性があります。

DX時代の人材育成戦略で押さえるべき要点です

DX時代の人材育成戦略は、研修メニューの拡充ではなく、役割別スキル設計実践の場、そして経営としての仕組み化で成否が分かれやすいです。

  • 役割別に必要スキルを定義し、全員に同じ到達点を求めないようにします
  • 座学に加えて、OJT・プロジェクト型学習で実務適用まで設計します
  • スキルアセスメントで現状とギャップを可視化します
  • 評価・配置・プロジェクトと連動し、経営戦略として継続します
  • 継続学習文化(勉強会、共有の場)を整え、学びを回し続けます

最初の一歩は「定義」と「小さな実践」から始めるのが現実的です

DX人材育成は、理想形を一度に整えようとすると、設計も運用も重くなりがちです。

まずは、全社員に求めるデジタルリテラシーと、推進役・専門職に求める高度スキルを分け、役割別スキル定義を作ることが出発点になります。

次に、少人数でもよいので、現場課題に紐づくプロジェクト型学習を立ち上げ、成果と学びを社内に共有すると、次の投資判断がしやすくなると思われます。

「育成の困難さ」と「人材不足」が課題になりやすい時代だからこそ、設計と実践を往復しながら、継続できる仕組みへ育てていくことが重要です。